HOME > ALBUM > 『榛』hashibami

2008_hashibami_F_400.jpg

『榛』hashibami

Artist:坂口由起子 
Produce : 周防義和
楽曲提供及び全曲編曲
2008
ZEZE-MU
ZENV-5721

シンガーソングライター坂口由起子の初フルアルバム。
軽井沢のスタジオ389で2007年2月から1年かけて制作。
周防義和プロデュース&アレンジによる新たなyukkoワールド。

坂口由起子web site http://sitesakaguchi.jp/yukko/

COMMENT

track01 『らせん階段』
跳ねた感じの明るい曲。無理にシャッフルにはせず、スネアなしでKickとPercussion中心にリズムアレンジ。サビパートでスタカートのBassで変化つけた。左からのEleGtrはトレモロモデュレーション付で、右はガットGtr。リラックスしたVocal が心地よい。スキャット部分が楽しく、3人でハンドクラップを録った。4拍目にキメがくるため以外と演奏がムズカシイ。

track02 『楽園』
社会派風な詞の導入で始まるRockTune。FolkGtrのストロークはD、Cadd9と「d」の音がステイするvoicing。EleGtrはアルペジオで。B3OrganやBrass、間奏のスライドギター等が絡み70年代ロッククラシックスなムードを漂わせた。クラシックスということは感性よりも適材適所で定番の音色フレーズをもってくる職人作業かもしれない。でも勿論感覚的な部分もある。スキャットパートが印象的なのでコーダ部でもレフレインさせた。かっこいい曲作りが光る!

track03 『Dragon Eyes』
モダンポップな仕上がりを目指した。高度で巧みに作曲されている。イントロやコーダのスキャットパートの伴奏にはAcoGtr、Harp音色によるシーケンスで構成。詞の内容から多少不思議さがあってもいい世界感なので、お手本なき感覚的なムードを追求した。ただElecGtrは歪み系でブルージィに、2コーラス後のコーダに行く部分ではラテン風味だったりレゲエ要素だったり変化に富んだ。EleBassの存在感も大きい。ループのリズムも効果あった。

track04 『ココペリ』
ピアノの2小節単位のリフはYukkoの弾き語りデモからの引用。1コーラス目はPianoとAcoGtrくらいで伴奏し、その後Bass,Drums,ElecGtrが入ってくる構成。Kick とBassの関係はほぼタイミング合わせるアレンジ。3コーラス目Aメロ部はStringsバックにリズムなしで。笛系やスリットドラムで『ココペリ』のキャラを演出!?サビではYukko自らハーモニーパートも歌った。
track05 『ふたりのココロが離れそうな時』
導入部はクリックなしでYukkoのKeyboard(Piano)プレイ。リズムはいわゆるin2でのる感じ。Bメロ部で一度リズムなしでソフトになってサビで盛り上げるのがミソ!こういうメリハリが作品の密度を上げる...と思うデス。ウクレレやB3-Organ音色も効いている。AcoGtrのアルペジオはオープン弦使用でテンション感を出せる。オーソドックスな構成力がないとこの楽曲は生かされないかもしれない。

track06 『キンモクセイの香るアパートで』
Pianoはホールにてレコーディング。イントロからAメロまでのElecGtrはスローアタックやハーモニクスを多用したプレイ。その後Bandurria、B3-Organ音色、サビ前はElecGtr×2の3度ハモでのかけ上がりフレーズ。スキャットフレーズとそれを追いかけるブルージィなGtrがポイントになって、このシリアスな歌を染み入るようになればいいな...と思いつつ。間奏のElecGtrのソロはアウフタクトと2小節だけど、この短い間奏ソロをキメることがポップの妙味だ...なんてネ。サビはYukko自ハモ(自らハーモニーパートを歌う)。これもオーソドックスな70年代風フォークロックバラードかも。歌いこんだヴォーカルが説得力ある。

track07 『虹をかけよう』
AメロはC、Csus4のリフレインでサビは5度進行、半音進行、テンションを多用したリハーモナイズのアレンジで機能的で高度なコードプログレッションを構築。と同時にオトナなムードに...フォーク風素朴さから上質ポップへ進化。コーダのスキャット部は4度堆積のVoicingによるパラレル進行を基本にした動きをStringsにVoiceを絡めた。映画音楽風なテイストかも!GtrソロやSlitDrumやB3などなど様々な音色をちりばめて、このポエム?orファンタジィは拡がりをもつことができた。

track08 『雨音はVALSE』
これも物語ではなくてポエム的な世界。B♭M7とG9が繰り返されるAメロ、サビはB♭7.13、A♭7.13、F7.13というように全くダイアトニックや機能的なコード進行に頼らない感覚的音楽。それでも共通ペンタトニックやレトロフレーズが不思議でウォームな雰囲気を醸し出せた。間奏のTrp音色も「間アリ」でうまく決められた。周防の作曲先行にYukkoがアンニュイな詩の世界を書き上げた。2コーラス目のサビはブラスバンドがダサくブンチャッチャと狙いどおり。マリンバの伴奏やちょいトラッド風でブルージィなGtrソロが独特の世界感に到達できた。歌もいい感じで録れた。

track09 『眠りの森で逢いましょう』
フクロウや森のイメージの導入から、Piano、AcoGtrでハチロクのリズムははじまりはじまり!詩もメルヘン風で不思議なのでアレンジも定番とかなんとかではなく自由なサウンドメイクになった。ジャズワルツやブルーノートでファンキーなフレーズから#9コードでのtuttiのキメ。小曲ながらアレンジしがいのある作曲を提出してくれた...っちゅう感じ。コーダ部のスキャットはイコライズしてラジオヴォイスにしたり遊んだ。いろんな曲書くよねYukko は!

track10 『榛-9年目の奇跡-』
demoを聴いて、こりゃ深い世界、と感じた。淡々といくにしても多少のメリハリ必要だろうな、と。導入部はフルートで入りElePfが伴奏の核をなす。同じスローでも『キンモクセイ...』がアメリカンなテイストだったのに対してこちらは欧風かも。ただStringsでアカデミックに盛り上がりたくなかった。間奏では高いパートでのPianoのこぶし入りフレーズから速いパッセージを思いついた。この楽曲にちょっと胡椒をふりかけたように。2コーラス目からアコーディオンでトラッド系のムードに展開、エンディングでは木管、Piano、FretlessBassが絡む。 そうとう時間をかけて作詞作曲したとのこと。ちなみに榛はヘイゼルナッツの樹。

track11 『でこぼこ道』
原曲は70年代風フォークポップだったので、そのナイーヴなムードを生かしつつもなにかアレンジのコンセプトを探した。そこでまず跳ねたリズムだが、ドラムはスネアを使わず、とか、2コーラス目Aメロ部のオブリガートのPianoはnon swing中心に、とか。間奏後奏やオブリのBrassにはブルーノートを使ったり、レゲエ的リズム、R&Bのバックのようなポップテイストに発展していった。Bassも随所にいい味でサウンドを引き締めた。コーラスは男性陣2人で盛り上げた?!。コーダはブラスのメロにつられてYukkoも歌い出して楽しくエンディング。

2008年2月の周防義和blogより
全編yukkoこと坂口由起子のオリジナル曲で、すべて周防義和編曲。そのなかには軽井沢ラヴソングアウォード2005 受賞曲『ふたりのココロが離れそうな時』、小諸ケーブルドキュメント番組エンディングテーマ曲『でこぼこ道』等も収録。

『でこぼこ道』は素朴なフォークでしたがちょっとレゲエ風にしました。坂口由起子は昨年の私が音楽担当した2時間ドラマ『めぞん一刻』でも劇中音楽にヴォイス参加しています。 坂口由起子を初めて聴いた時の印象は女性のピアノ弾き語りタイプのシンガーソングライターでありながら、そういった人にありがちなピアノバラードとかはなくてリズムにのったいいセンスの人だな、と思ったので、そこら辺をさらに深〜く追求しました。臭く盛り上がって歌い上げるのではなくて、ソフトなリズムだったり、ホワッとした全体の雰囲気で素朴に...でも大人な世界感、とでも言いましょうか。

タイトル曲『榛』はスローでちょいトラッドまたは『和』なムード、での重たくはならない-いい深さの歌、『楽園』でのロックテイスト、『Dragon Eyes』ではモダンなポップ感覚、『らせん階段』ではホワッとしながら前向きな明るさ、『眠りの森で逢いましょう』ではちょっとジャズワルツ感覚、『虹をかけよう』ではメルヘン的ながら大人の和声感覚と、嫌みなく拡がりあるyukkoワールドをサポートした...つもりデス。『キンモクセイの香るアパートで』では70年代風なスロームードでひねりなくバラードが聴けるし、いろんなカラーが出せたのではないかと思います。『雨音はVALSE』という曲は周防義和作曲で、これは不思議系...でしょうね。ソフトだから「変」な歌だとは言われないでしょうが。

STAFF & MUSICIAN

Produce:周防義和 
Executive Produce:坂口賢一
制作:ZEZE-MU
企画:P.O.P.HOUSE
ALL SONGS作詞作曲:坂口由起子 
ALL SONGS編曲:周防義和 Except:「雨音はVALSE」
作詞:坂口由起子 
作編曲:周防義和

vocal&piano:坂口由起子
guitars,fretlessbass,keyboards,
programming,manipulate,bandurria,ukelele,
slit-drum ,shaker&vocal:周防義和
fretlessbass:山浦タケヒコ
slit-drum & rain-stick :笹田和裕
vocal & handclap:坂口賢一
engineer:傳左衛門&源助
mastering:小泉由香 for ORANGE
Recorded at Zeulb389 2007
Produce:和田亨 
Engineer:渋谷直人 
recorded at MIT Studio

飛鳥ストリングス、風間文彦(accordion)、柴野さつき(piano)、内橋和久(guitar)、藤井珠緒(marimba)、リージェフリーズ(percussions)etc..