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映画『鴨川ホルモー』 Original Soundtrack

音楽(作曲編曲):周防義和
2009
EMIミュージックジャパン
TOCT-26812

COMMENT

万城目学(まきめまなぶ)のベストセラー小説の映画化。ジャケットの背表紙は見る人が見ればわかる...万城目学氏の文によると小説を書いた時点で本の表紙に考えていたコンセプトだったとのこと。それで単行本のほうはイラストで描かれ、映画化にあたって実写でのこのアングルでの世界が実現した。四条通りの八坂神社をバックにした構図、Beatlesのアビーロードの構図だ。

本木克英監督はこの原作の世界感に70年代~80年代風の木造アパート、その時代の貧乏臭い、ちらかった部屋、流行とも余り関係ない学生感を注入、それが京都大学吉田寮(映画では百万遍寮という設定)の緑ある中の木造の学生寮=昭和な雰囲気がたまらなく良い。全編京都での撮影もこの奇妙キテレツな展開を和らげているのかもしれない。清水寺三年坂、インクライン、平安神宮、吉田神社、木屋町、先斗町、下鴨神社、光明寺、荒神橋、四条烏丸交差点、鴨川デルタ、祇園.....

ワタシ周防義和の音楽は様々な角度から攻めたような気がする。といっても所詮周防義和'sパターンといわれそうではあるが。楽器編成でいうと弦楽群、木管群、フレンチホルン、鍵盤打楽器、打楽器、笙、和太鼓、エレキギター、打ち込み、三線(沖縄の三味線)という布陣。自ら弾いてみた三線はいわゆるクリックなしで映像を見つつ即興的に弾きながらまとめていった。そこにサンプリング系の音色を打ち込みでなく手弾きで合わせた。三線はちゃんと弾いたのははじめてだったが、マジックでフレット確認の印を書き、陰旋法音階をどうにか弾いた。またエレキギターでも同じような即興的作曲を試みた。そこでもクリック(メトロノーム)なしで弾いて、それに合わせてダブルで同じことをやりチョイ大変ではあったが楽しくもあった。CGシーンも多く、その完成前にある程度作曲に入らねばならず、そこでは想像でつくる感じはちょい難しくもあった。

また、京都ということである種の「和」を醸し出したが、それは古典的アカデミズムの「和」ではなく、この作品用の「和」なのだと思う。僕の「和」なんだろう、たぶん。それを笙や木管などでも表現したがエレキギターでもやってみた。この作品がもつ奇妙さ、おかしさは束縛なく自由に発想しろ、というものなのだろうし、勝手きままな作編曲を楽しんだとも言える。伝統やクラシックするということではない。勿論、映画の主役はこの物語りであり、俳優さんたちの演技であり、映像なので実際はこれらの劇中音楽はさりげなくサポート役なので、そんなに気になるものではないと思う。またロマンティックな名曲があるわけでもないデス。

山田孝之、栗山千明、浜田岳らの20代前半の実力ある役者たちがキャスティングされて、面白い作品になったのではないだろうか。ここでは教訓や安っぽい感動、涙等は全くなく、ただ阿呆になって笑えればいいのでしょう。本木監督がもつコメディのコンセプトが全開してると思う。作品は一般公開前の3月に開催された沖縄国際映画祭でゴールデンシーサー賞を受賞した。
<2009年4月の周防義和ブログより>

『鴨川ホルモー』、ホルモーって?ホルモンとは全く関係ない。鴨川は京都の鴨川。京都を舞台にした学生達の話ではあるが単なる青春ものとはわけが違う。とんでもない世界へ連れて行かれる。奇妙キテレツ系が入ってくる、が、面白い。万城目学の原作もノリというかテンポあって痛快に書かれている。それをほぼ原作に沿って本木克英監督が映画化。出演は山田孝之、栗山千明、芦名星、濱田岳、石橋蓮司、荒川良々など、このキャスティングもめちゃうまくいってる気がする。本木監督の笑いの感覚=センスも僕は素直に受け止められる。京都歩きを一応趣味としてる僕としてはいろんなシーンがどの辺りだかがわかり(わからない場所もあったが)親しみを覚えた。鴨川のあの石畳というか置き石で渡れる場所も歩いたことあったし。京都大学の吉田寮が映画では百万遍寮(京都の地名に百万遍という場所がある)という名前で登場、ここの古~い学生寮の雰囲気が凄~い、でもそれがとても良い。下鴨神社、インクライン、高瀬川、先斗町なども京都ならではの風情。原作の表紙も河原町から八坂神社に向っての景色、映画にも登場する。

音楽の楽器編成としては木管セクション(fl,ob,cla,fag)、フレンチホルン、チューバ、弦楽セクション、打楽器、マリンバ、グロッケン、和太鼓、笙(しょう)、エレキギター、ウーリッツアのエレピ、三線、コンピュータ打ち込み、とけっこうあらゆる方向から攻めてる。京都が舞台、式神とか伝統とか絡んでくるので「和」なものを取り入れつつ、主人公の学生のボロアパートの一人住まい等ではエレキギター歪み系でチープさを表現。勿論「さだまさし」なんていうアイテムも原作や映画にも登場するのでフォークギターならなおさら合うだろうが、そこまでシンクロしなくてもいいんじゃない的なフォークよりロック派的いい意味勝手な判断をした。

雅楽で使う笙や和太鼓グループの音もとりこんだり、早稲田アバコ301スタジオでは大掛かりなレコーディングだった。音楽のミックスは一番町にあるサウンドインFst.で5.1サラウンドシステムでトラックダウン、大船の松竹スタジオでの映像とのミックスには1週間程かけた。
<2009年1月の周防義和ブログより>

SONG LIST

01 鴨川ホルモーへの誘い
02 Dance Kai Marshul
03 青竜朱雀白虎玄武
04 数式ハ浪漫デ解ケナイ
05 百万遍の即興曲
06 ギタラテンなカノジョ
07 Sympathy For The Oni
08 ボンチャンボンボヤージュ
09 高瀬川ファンク
10 ユルクユウウツ今出川
11 弦丿数式、浪漫哉
12 クスノキ・グェゲボー
13 神々の怒りとその終焉
14 木屋町べろべろ小唄
15 彼女丿鼻ハ美シイ
16 BURI DO GUERRON CHORIE
17 世間虚仮(セケンコケ)
18 マケ・デ・チョンマゲ
19 十七条の十六ビート
20 糺丿森六弦抄(ただすのもりろくげんしょう)
21 魑魅魍魎祭り(ちみもうりょうまつり)

作曲編曲 : 周防義和

STAFF & MUSICIAN

manipulator : 栗山善親
和太鼓:加藤拓哉、加藤良平 
笙:石川高 
latin percussions:藤井珠緒
marimba&glocken:藤井珠緒
flute&piccolo:旭孝、金子奈美
oboe:浦丈彦
clarinet:十亀正司
french horns:吉永雅人、勝俣泰、中島大之、上間善之
tuba:松永敦
弦セクション:桑野聖ストリングス
elec-guitar,aco-guitar,keyboards&三線:周防義和

Recorded at Zeulb389, 早稲田アバコ301st & Sound Inn Fst
Nov.~Dec. 2008

音楽プロデュース:小野寺重之(松竹音楽出版)&EMI
Engineering&MIxing : 小幡幹男
Musicians Coordination : 佐々木賢作 松井香(Kick'up)
作曲編曲 : 周防義和