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映画『それでもボクはやってない』
Original Soundtrack

音楽(作編曲):周防義和
2007
Ponny Canyon
PCCR-00445

フジパシフィック音楽出版
アルタミラミュージック

2008年 第31回日本アカデミー賞優秀音楽賞受賞

COMMENT

主人公徹平(加瀬亮)のセリフ(映画の最後のシーン)を受けてはじまるエンディング音楽『静けさの中で』は大納得のいく仕上がりで、僕の代表作品になると思う。最初のdemo段階で周防正行監督に「思い切っていっちゃえば...」と導かれた。

tomo the tomoの歌(大部分が彼女自身のひとりダビングによるアカペラ)が素晴らしい。

彼女の唱法は実声、ファルセットともにちょっと異質なものを含んでいていながらぐっとくる。ブルガリアンヴォイスの影響からそういう発声も取り入れているようだ。基本的にはポップの人だがただのポップミューシャンではない。(ちなみにブルガリアンヴォイスは西欧クラシックとは全く異なる音楽。唱法も地声でペダルになる音を基調としたモーダルな手法で成立しているので非西欧要素の仲間だ)

作曲的にはこの歌は普通の部分と普通でない部分で成立していて、出だしはコード進行もよくあるやつ。展開部分からちょっとづつ異質なものを入れつつ、サビ的なところでは伴奏なし。主旋律だけになる。またMajorではじまる曲だが、サビではそのTonicのMinor...それもMinor7th,9th,11th---スケールでいうDorian風になっていてコード進行はしていない。

そして間奏、弦楽セクションがでてくるパートではTonicMajorとTonicMinorがリフレインするパターン。あまり普通ではない。弦楽セクションのメロディの和声も綺麗な3度を排し、モノトーンな4度5度でつけた。V.CelloとContraBassの旋律に歪みのE.Guitarをユニゾンさせた。

音楽用語でなくラフにブンガク(?)的に言うと、強い気持ちの心の叫びを優しく表現した曲。情緒的になることをなるべく避け(僕がフツーに泣けるメロディに興味ないせいだ)、ドライだけど歌心ある音楽を目指した。

弦楽セクション自体は欧風なわけだけどハーモニー等で非西欧のムードをだしたかった。安めのロマンティシズムはダメだっていうこと。クラシックやってる場合じゃないでしょっていうこと。

僕の音楽はドラムや打ち込みのビートががんがんきてなくても基本的にはキープされてるリズムにどうグルーヴするかがコンセプトなので、精神的にはロックだったりソウルの気持ち。まあ誰もそう思わないでしょうけどネ。

パーソナルでスピリチュアルなものをつくりたかった。優しさって自信がないとダメだっていうこと、大袈裟じゃないけどスピリチュアルなものっていう地点に向っている 。

demoと本番のレコーディングで2回もいちからアカペラ合唱部分を録るのは大変な作業でした。とにかく歌(作詞も)のtomo the tomoにほんとうにすご〜くすご〜くすご〜く感謝している。

それから、このサントラは映画本篇では使用していない音楽制作過程での試作曲作品もリアレンジしたり、リミックスして完成させ収録したスペシャルなアルバムになっている。例えば男声の擬音だけでリズムを構成した音楽『声ノ律動、打楽ノ時』が3曲(じょどぅん、しいとぅしい等)あり音楽的にはとてもとても面白い感じになって楽しかった。

また最後に『静けさの中で』のカラオケが入っているが、これはイントロを4小節つけて、スキャット部分、アカペラ部分には主旋律をそのまま入れた変則カラオケになっている。こんなウレセンでもない楽曲のカラオケなんてねえ*%^$#@&!このカラオケでこの歌、歌えるお方は相当な歌唱力のある人ということになります。

STAFF & MUSICIAN

Sound Produce:和田亨 
Engineer:小幡幹男 
Musicians Coordination:松井香
佐々木賢作(オフィスケン)
Mastering:小泉由香(ORANGE)
Produce:桝井省志 
Executive Produce:関口大輔(フジテレビジョン)
A&R Produce:棚橋裕之(Ponny Canyon)
フジパシフィック音楽出版
アルタミラミュージック

vocal:tomo the tomo
piano:柴野さつき
strings:桑野聖グループ
manipulator:栗山善親 
mail chorus:ミュージッククリエーション
guitars,bass,bandurria,
ukulele,programming:周防義和