painting by Michihisa Sakai

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自作の殿堂!!

これはスゴ〜ク良し!と思っている自分の楽曲作品を自画自賛(自曲自賛)し自分の殿堂入りとするべく勝手な項。
まあ言ってみれば自分の好きな自分の楽曲紹介&解説デスワ!

「静けさの中で」

映画『それでもボクはやってない』(周防正行監督、2006年)のエンディングテーマ曲で、その後tomo the tomo carpe diemの1stアルバム(2010年)にリアレンジして収録。この2つのversionがある。サントラのほうはtomo the tomoのアカペラひとり合唱から弦楽セクション、carpe diemのほうはよりロックなアレンジで両方とも最高に納得の出来栄え!代表曲と言える。
声のパートはパースナルな感じで弦楽パートは個人を超えた雰囲気にしたかった。個人的なラヴソングとかそういう次元でない広がりのある曲でいてポップな表現の歌。
しかしポップ・ミュージックと言っていいのか、広義の意味ではポップの範疇だが、ヒットチャート的な意味で言えばポップでないかもしれない。
この歌がクラシカルな唱法でないシンガーで歌われていることも重要な意味を持つ。やはり現代的なリアリティは欲しいのでロックイディオムを持っている歌手でないとダメ。8ビートのリズムに乗れること、これは身体性とも言える、リズムに乗れるという概念は難しく、譜面の勉強とか発声の訓練では身につかない。クラシック系の歌手ではほぼ不可能と言える。また西欧クラシックのファルセット系ではなくて実音で表現できることが重要。ただブルガリアン・ヴォイス風な唱法は取り入れてもよい。tomo the tomoはロックな表現、ブルガリアン・ヴォイスも影響あるので彼女でなくてはこの曲は存在しえなかった。ポップ、ポピュラー音楽って本来大衆音楽ということだが、20世紀に凄く進化してある種のアートに突入している音楽もあるかもしれない。そこを目指したい。
映画『それでもボクはやってない』(劇中音楽は7曲だけだった)音楽で日本アカデミー賞優秀音楽賞受賞したのはこの「静けさの中で」のおかげだと思う。 作詞:tomo the tomo

「声ノ彼方デ連鎖スル」

周防義和1stソロ・アルバム『空想から映像連鎖』(1998年)に収録。種ともこの声、桑野聖の弦楽、打ち込みリズムが絡む楽曲。イントロの声の重なるパートはlydianモード。このひとりダビングのアカペラパートが種ともこ独特の雰囲気で次の弦のパートへ繋がりを作れた。弦でのリズム表現を考えた曲。後半のエレキギターソロ(千葉孝)、トランペットソロ(五十嵐一生)もコンセプチュアルな即興演奏で弦楽とのブレンド具合も素晴らしい。種ともこの後半のヴォーカルはアドリブだが、ジャズ歌手のようなテクニカルなフレーズではないところがいわゆるソロ回しにならず、この楽曲のコンセプトを捉えてくれている。周防義和執筆の作曲理論CDブック『僕らはROCKで作曲する』でも分析している。

「さよなら」

NHK・Eテレ『にほんごであそぼ』(2012年)のために作曲。2012年のライヴが最初の公表だがその翌年同番組の月の歌に選出され、また公開録画用にエンディングを延ばしたアレンジも行った。
大正末期から昭和にかけて活躍した詩人金子みすゞ(1903-1930)の詩に曲をつけた。その詩はにほんごであそぼ 月の歌で見れる。マイナーキーながら情緒的に悲しい感じではなく、転調から後半はA♭B♭からCに解決するフォーム。しっとりしつつも前向きに終わる。わかりやすいメロディでいてどこかに憂いがあって、でも悲しく終わりたくはなかった。意識はしていなかったが少しシャンソンみたいなムードもあるかもしれない。歌ったのはおおたか静流、子供たち、など。おおたか静流さんに周防義和の最高傑作!という言葉をいただいた。感謝デス。僕のブログにも視聴者から多くの賛辞が寄せられた。   詩:金子みすゞ

「Love is more than this」

映画『東京マリーゴールド』(市川準監督、2001年)のエンディングを飾る主題歌で歌はスーザン・オズボーン。サントラに収録のあとにコンピレーション・アルバムにも収録された。
諸処の事情からレコードメイカーとのタイアップによって作曲した楽曲だが、このタイアップは素晴らしき結果を生んだ。映画音楽の主題歌タイアップは意味不明の酷い場合がほぼだが、これに関しては凄く良かった。
Aメロはよくあるポップのコード進行でメロディもシンプルだが展開部分では転調転調で2-5-1のような終止感に向かうコード進行ではない。臭く盛り上がる曲でもないがスーザン・オズボーンの歌によってある種の盛り上がりが作れた。盛り上がりと言ってもある種抑制の効いたものだ。リズムをカラダで捉えていれば大げさな表現はいらず抑制の効いた歌い方ができる。リズムのキープされた音楽へのアプローチとはそういうことがひとつの重要素だ。大人のポップ・ミュージックが成立できたのではないかと思う。弦楽セクション、木管、パーカッションなどの楽器編成。
スーザンさんはバンクーバー在住のシンガーで、レコーディングでは3テイクほどで終えた。
元々、田中麗奈、樹木希林出演の「味の素ほんだし」(1990年代)のCM音楽から膨らませた楽曲。
作詞: David Densmore & Susan Osborn

「For Little Tail」

2010年のKOKIAのアルバム『Road to Glory』に1998年版と新たなリメイクversionの2010年版「For Little Tail -once-」の両方が収録されている。
「For Little Tail -once-」ではオリジナルより少しキーを下げ、オトナなムードのKOKIAの歌が聴ける。僕のアレンジも少ししっとりでもドライなムード。サビの言葉「ザビアツタ」は僕の仮歌きっかけでそれをKOKIAが歌詞として取り入れた。充分に聴き応えのある大人のポップ・ミュージックとして成立していると思う。全編通して奏されているトライアングルはサンプリングではなく、パーカッションの三沢泉が全部演奏しているもの。フレットレスベースは泉尚也。
アコースティック・ギターは周防義和。
浮遊感がありつつもKOKIAの歌の力強い歌唱が素晴らしい。KOKIAはクラシック的な唱法をマスターしながらポップな表現もできる稀有な能力に長けている。ファルセットが太い声でいけるのはベルカントの影響だろうか。
1998年版ではコーダ部分にスキャットが入るが、ここのパートはKOKIAのアドリブで歌ってもらった。最後はすごく高い音域へ上りつめる声が当時驚いたが、スゴイ。
ゲーム『TAIL CONCERTO』の主題歌。作詞歌:KOKIA 
2015年LieAnによってカヴァーされている。

「シアン」

ベーシスト泉尚也ソロアルバム『LIFE』(2008年)のために作曲した。フレットレスベースでメロディをとるが、自分でもフレットレスベースを弾きつつ作曲した。
ベースがメロディを奏することでの難しさは非常に大きいが、それだけスリリングな楽曲作りができるというチャレンジ精神のみせどころでもある。
イントロは4度2度の堆積のヴォイシングでモード的なアプローチ。
ベースのメロディからなるテーマ部分はコードが転調風に変わり、2−5−1ではない行方の曖昧な、ある意味印象派的な流れを生む。そこでは4度2度にこだわったメロディだったり、ペンタトニック中心に応用したモティーフが生まれた。この曲はフレットレスベースの達人である泉尚也がいてこそ成立したと言える作品。tomo the tomoのヴォイスも絡みノンジャンル、無国籍なムードの漂う音世界が現出。周防義和執筆の作曲理論CDブック『僕らはROCKで作曲する』でも分析している。

「東方弦聞録」

Violinist桑野聖ソロアルバム『東方弦聞録』(2002年)に収録されている。跳ね気味のリズムに桑野聖のテーマは4度中心にときおり3度ハモりでひとりダビング。途中のアドリブソロパートもすべて桑野のViolinでナマの音とディストーションかけた音色の両方とも。曲としてはコード進行という感じではないが1発ものでもない。なにか無国籍でノンジャンルかもしれない。ロックやジャズのリズムグルーヴ以降の音楽がなければ成立していなかったジャンルでクラシック出身ながらリズムに乗れる演奏家としての技量を持った桑野聖ならではのスゴイ「ノリ」が聴ける。この跳ねのリズムは難しい。スウィングといったもののような軽い楽しいグルーヴではなく、レガート風にリズムに吸い付くかの如く乗っていくのが気持ちいい。この感覚はクラシック音楽にはないので、クラシックだけのキャリアの演奏家には乗れないことが多い。

「Spiral」

 ・・・・MODE POP誕生!!

1997年のCOMAの1stアルバムに収録されているが、作曲したのは1985年。
〈MODE POP〉などというジャンルは聞いたことがないかもしれないが、この楽曲を分析するとDorian,Lydian♭7thというモード手法による作曲作品である。モード手法は1960年代のMiles Davis,Wayne Shorter,Herbie Hancock,Chick Coreaなどの理論派のJazzミュージシャンによって推し進められた高度なジャズであり即興演奏の可能性を追求した理論でもあるが、僕はそれをポップミュージックに応用した。
コード進行ではないからといっていわゆる1発コードとは異なるのがモード音楽。
その解説は周防義和執筆の作曲理論CDブック『僕らはROCKで作曲する』に詳しくあるが、この「Spiral」は画期的な歌作品と言える。8分の6のリズムにドリアンモードのミニマルパターンにメロディが乗り、サビはミニマルパターンの伴奏メロディそのものがサビのメロディになっている。そのミニマルパターンもズレていくスリリングさがあって、ミディアムスローの曲ながらきちっとリズムグルーヴの重要さもある。また9thや11thに留まり、♭13ではなく♮13thを使用すること、コード進行しないことでドリアン系ということになる。
ほぼ一般人には理解されないが、こういうことを追求していかなければ。歌詞の内容も意味深で現代都会的なスゴイ作詞が行われた。
作詞:水菜おみ 歌:小石巳美

「Out Of The Blue」

WOWOWドラマ向田邦子『イノセント』(2012年、全4話)シリーズの主題歌で周防義和ソロアルバム『遇游歌集』(2015)に周防義和の歌でフルコーラスで収録されている。
コード進行としては半音進行などのdominant motionやブルース風7thの雰囲気があったりという技巧的な和声進行を駆使して作曲。渋い大人のムードが全体を包む。デューク・エリントンから刺激されたのは後半でドラムがリムショットとサイドスティックで出すリズムとか、スキャット部分の雰囲気。リズム・セクションはガットギター、ベース、ピアノ、ドラムという布陣。これはモード系ではないが技巧的なフォームに負けない曲のキャラクターが必要と考えた。コード進行が高度で複雑だと、メロディを作る以前にコード進行が導いてしまうので、なにか曲が成立したかの如くなるのは危険なこと。巧みなコードワークはオリジナルなメロディ構築を阻むおそれがある。だから技巧的な和声進行の楽曲をいつも作ることは良くない。また1930年代〜50年代ジャズ・スタンダードの時代にやり尽くした感があるので、その単なる踏襲にならない楽曲作りが大事なこと。
「Out Of The Blue」ではなにか自分なりのムード、特性のある音楽が成立したと思う。
タナダユキ監督にも気に入っていただき、またブログにも多くの賛辞が寄せられ、その時点でCD化されていなかったが2015年にCDに収録。
英語作詞のJirafaの貢献度も大きいし、この詞の内容も凄く好きだ。また『イノセント』ではtomo the tomoが歌ったversionもあり彼女の英語ニュアンスの独自性が出ていてこれも素晴らしい。

「ごはんのメロディ」

ユニットANIMA-ANIMUSのために作曲(1986年)、その後バンドBREW-BREWのアルバム『文化ポップ』(1991年)に収録された。この曲は1980年代のアフリカン・ミュージックに刺激を受けてコード進行せずに作曲した。それはTALKING HEADSの『Remian In Light』(1980年)に呼応したところもあってポップ・ミュージックの新たな価値観手法の実験でもあった。「ごはんのメロディ」はpenta-tonic中心ながらmajorスケールで成立している、ミディアムテンポの楽曲。アメリカのR&BやBluesのblue-note感覚や7th系がここでは影を潜めているのはアフリカンポップの影響。ライヴでもさかんに演奏した。アフリカ音楽ではサニー・アデ、ユッスー・ンドゥール、カクラバ・ロビ、ラミン・コンテなどが好きだった。作詞:小石巳美&周防義和

「樽と瓶篇」
2000年 version
サントリーウイスキー山崎

CM音楽。ウィスキーの樽と瓶だけしかでてこない硬派な映像に作曲した。
お酒のCMといってもお酒を飲んだ時の楽しい雰囲気とか夜とか、そういうイメージは全くなくドキュメントのような、とにかくこのウィスキーの味は素晴らしいのだ、ということを伝える格調高きCMだった。音楽も格調高く行くために弦楽セクション、ピアノ、グランカッサという楽器編成で臨んだ。楽器編成はクラシック調だが音楽はリズムのキープされたもにソラドレ的な和声・・3和音とかではなく・・で始まり中低域の弦がメロディを奏する。展開では短3度で和声が転調していく。和声は難しく、メロディも一般人が歌えるとかいうことではないが、ある種シンプルなわかりやすい音楽とも言える。このウィスキーを作り上げた一級職人の心意気に合わせた、とも言える。侍が出陣する前の緊張感かもしれない。映像に従属的に合わせたものではなく、映像に対等に感覚的に合わせた、と言うべきか。音楽が入ることによってこの映像に新たな解釈、見方を感じてくれれば幸せなこと。60秒タイプが見応えある。これはCMの面白いところで、アートに寄っている。
セリフなどを受けて映像をフォローするような日常生の映画のシーンでは音楽の主張がありすぎて使ってもらえないだろう。
とにかくCMなのに自由にやりたいことができた、ありがたきお仕事!

「Drugstore Girl」

映画『ドラッグストア・ガール』(本木克英監督、2003年)主題歌でその後tomo the tomo carpe diemの1stアルバムにもリアレンジして収録された。典型的なガールポップかもしれない。エレキギター伴奏のミディアムファストのテンポが気持よく突っ走る。
凄くブルージィなムードはないがキーのメジャー・スケールコードに対して♮7の音は使用していない。またドミナント7thのコードも使用していない。Sus4があるのは実はさりげなくギターtuneのロック手法が完全にリスペクトした作曲法になっている。
歌やギターはロック味というのはよく聴かれるが作曲上もロックというのが日本ではおざなりになっているかもしれない。シェリル・クロウの楽曲などは歌やギターサウンドがロックな上に作曲的にも見事にロックしている。
英語作詞と歌のtomo the tomoが作曲上譜面をさらに自分のニュアンスを入れ8ビートのリズムに乗ったかっこいいガールロックポップとしてパーフェクトなサウンドに仕上げた。2010年のtomo the tomo carpe diemのアルバムversionではテンポを落として、キーも2度下げ、アコースティック、ちょいエスニック風味をいれたリアレンジにしてみた。ライヴでもさかんに演奏された。
映画『ドラッグストア・ガール』では冒頭シーンで流れ、主人公田中麗奈がカレシにふられ電車で終点まで行ってしまい、その風変わりな郊外の町への導入的な意味合いに使用されている。

「これが恋?」(≒ 私の夢)

映画『舞妓はレディ』(周防正行監督、2014年)の劇中歌。ジャズ・スタンダード風なバラード。コード進行も半音進行などドミナント・モーションや転調を駆使した技巧的な手法。
メロディは同じ音がステイするのにコードが半音下に移行するというテンションを多用したコードの技法。ボサノヴァの影響でもあり、この曲はギターで作曲した。
主人公のロマンティックな気持ち、心の中での告白のような、、、
楽器編成は弦楽セクションに木管、ピアノでギターは使用せず。ここに映画の主人公春子役の上白石萌音が歌った。大宮臨太郎(Viokin:NHK交響楽団)の弦楽セクションのレコーディング時にスタジを訪れた上白石萌音(当時15歳)にサプライズ的に歌ってもらい、結果的にそのテイクをOKにした。
「私の夢」はサビが少し異なるが同じ曲。こちらはガットギターの伴奏だけで上白石萌音が歌う。その歌詞は鹿児島弁と津軽弁の混じったものだが萌音ちゃんは綺麗な発音で歌った。映画ではこちらは撮影時にセリフのようにシンクロで録り、そのままそのテイクをOKにした。サントラにも収録しているがDVD,BluRayでそのシーンを観るのもお薦めしたい。作詞:種ともこ&周防正行

「Piano Kiss」

映画『恋と花火と観覧車』(砂本量監督、1998年)の劇中音楽で、その後周防義和ソロアルバム『映像から空想連鎖』に収録。 ピアノ:柴野さつき
これはピアノ・ソロの短い音楽。劇中では主人公の松嶋菜々子が恋ゴコロを寄せる長塚京三に告白的にせまるシーンに使用。この音楽が2人のキスへの導きのような役割を果たした。大げさなロマンティック曲ではなくシンプルな和声と転調的に展開する小曲。それは主人公が観覧車から見る小さな花火に連鎖してこの音楽が始まるから。
キス後はストリングス中心の拡がる音楽が夜景にシンクロする流れになっている。
柴野さつきのピアノの一音への入魂というか、一音への深いタッチには学ぶべきものがあった。

「Zezeの舞踊曲」

周防義和ソロアルバム『遇游歌集』(2015年)に収録されている。Violinst桑野聖とSingerのtomo the tomoの声をフィーチャーした無国籍な、ノンジャンルなオリジナル世界を構築できた気がする。これは代表作と言って良い!
楽器編成はViolin,Viola,V.Cello,FretlessBass,ElectricGuitar,Drums,Percussions,Programming,VocalでVocalはtomo the tomoのひとりダビング。
2度でぶつかる和声や4度系のヴォイシングで始まり、テーマメロディはLydian♭7thのmodeで成立。このモードスケールの特異性を活かした危なき現代性のような、それでいてリズムに乗った舞踊のような不思議で楽しき?!メロディラインが展開。
これが例えばTangoというジャンルだと凝った和声進行と濃いムードのアクの強いドラマティックなメロディが来るが、ここではモードというドライな展開なところが異なる。Rock寄りということだろうか。
中盤では弦楽アンサンブルと声がユニゾンで厚みを出して、その上にtomo the tomoがソロパートを歌う、最後のほうではアドリブでも歌ってもらった。Drumの佐治宣英もいいプレイ。Zezeとは東アフリカのほうで弦という意味。